アルバム『東京少年少女』本人解説再掲載
アルバム『東京少年少女』本人解説を発売日フェイスブックに掲載いたしました。
読み逃した方の為にHPにアップさせていただきます。では、どうぞ!!
みなさん、お元気ですか?SNS否定派の角松敏生です(笑) という訳で、ご時世の風を受け昨年オフィシャルFBを開設しましたが、本人初投稿でございます。否定派と言いましても当世事情鑑みプロモーションツールとしての重要性は深く理解しております。 いつも私の代わりに更新担当してくださるソニーアリオラスタッフ様お疲れ様です(おじぎ) さて、FB初投稿にて新作「東京少年少女」作品解説をさせていただきたいと思います。尚、本稿は角松敏生ファンクラブBICサイト内「俺の話を聞け」コーナーにてほぼ同様の文面を本FBに先駆けてアップしておりますのでそちらでもご覧いただけます。よろしくお願い致します。
日頃より角松作品をお聴きいただいてくださっている皆様、いつもありがとうございます。当方、4月3日、約5年ぶりとなります新曲を収録しましたミニアルバム「東京少年少女」をリリースいたします。 近年の拙作には自筆に寄る長文ライナーにて楽曲解説をしたためることが常でありましたが、今作は私の希望により紙ジャケ見開き仕様にしたことで、いつもの長文ライナーの封入が困難だったためCDインナーは歌詞とクレジットのみが掲載されたブックレットになっております。そこで、この場をお借りして、いつものような長文楽曲解説を書きまくりたいと思いますので、春の夜、時間つぶしのお供にでもしてくだされば幸いです。
まず始めに、今作「東京少年少女」はコンセプトアルバムであると同時に5月からスタートする例年恒例となっております、角松敏生、初夏の本線ホールツアーを盛り上げるための重要なフックとしての情報ソースでもあります。 今年も、角松、元気で、ささやかながら全国ホールツアーやりますよ〜 みなさん、来てくださいねぇ〜、 あと何年演れるかわからないですよ〜 的なインフォメーション、アナウンスを内包した作品です(笑)ツアーの内容は、前半と後半はいわゆる往年の(言いたくないですが・苦笑)角松スタンダードナンバー目白押しで固め、中間に新作のコーナーを挟むという趣向でお届けします。参加メンバーは、Key森俊之, Bass山内薫,Gt 鈴木英俊というおなじみ鉄壁に加え、1年ぶりのツアー復帰、今じゃ、立派な若手重鎮?(笑) Dr 山本真央樹、という4リズム。そして、名手Sax 本田雅人と彼が率いる、彼がプロデュースする若手4人を加えた5管ホーンセクション、さらに!ミュージカル界のスター職人、ファーストコール吉沢梨絵、小此木まり、がバックコーラス&デュエットボーカルで参加します。(戸田、新潟、塩尻、札幌は小此木まりの代わりに昨年中野サンプラザで活躍したこれまた職人、吉川恭子参戦。劇団四季つながりの吉沢、吉川のツインボーカルはある意味ちょいとした知る人ぞ知る事件)という、まぁ、わかる人にはわかる超豪勢なライブですわ。見に来たらわかります。というか見に来ないと損です。もちろんこちらも商売ですので、そう言いますが、いわゆる、「盛り」で言ってないです。本当にこれは事件だというくらいのメンツで回れることが本当に私自身楽しみでしょうがないです。有難い。 ま、年末も来年もこのメンツを揃えるのはなかなか難しいでしょう。一期一会、是非、沢山の皆様のお運びをお待ちしております。アルバム解説の前にまたまた長い枕になってしまいましたが、とても重要なことなので先にお伝えしておきます。
「東京少年少女」
本作を明確に説明するならば、知人である舞台作家の頭の中にのみある物語「東京少年少女」を私なりの解釈、想像で「音像化」した作品、ということであります。 何故このような試みをしたかと言いますと、20年以上前から自分が心に秘め目指してきた帰結点に向けての「重要な学びと経験」の一環となるからです。 しかしこの帰結点に関しては現状では何の具体性もありませんので今はお話することはできませんが、その自分の目標を達成するための重要なステップなのだということだけ、お伝えしておきます。
とあるご縁で出会った舞台作家と飲み友達になったのが2年ほど前のこと。酒を飲み交わしながら向こうは舞台の話、僕は音楽の話、お互い取り留めもなく語り合っていました。その舞台作家演出家が今回、共同作詞クレジットにあるKOUTA氏であります。そんな語らいの日々の中で彼が熱く語る「東京少年少女」の物語は、私にとってとても興味深いものでありました。 物語の概要は、高校の吹奏楽部を舞台に、イジメや校則に縛られた生徒たちと大人たちとの間で起こる軋轢の中、混迷する学内で潰れかけた吹奏楽部を、新任教師が立て直すお話。でもKOUTA氏の中にあるのは、漠然としたプロットとタイトルだけで、脚本はまだ存在しません。こうして筋書きをサラっと書いてしまうとよくありがちな話にも見えますが、KOUTA氏には、もしこの話を本当に舞台化するなら、音楽中心に進めたいという想いがあり、そこに興味を引かれました。台詞を極力排除し、音楽中心に物語を表現する、これは前述した、僕の長年温めている作品構想とも重なる部分があるのです。
先にまだ話せないと述べましたが、少しだけ語っちゃいますと、音楽中心で物語を表現するのは単純な話、オペレッタではないかと思う人もいるだろうけれど、私が思い描いている数年後目標とする「作品」の姿とはオペラのような様式美的なことではなく、大衆音楽のライブが持つ即興性を中心に音楽ライブが表現の中心となって、物語やメッセージのメタファーを行うようなエンターティメントです。もっとも私の場合、台詞は文言表現の一端として重要視はしたいと思いますが。
まぁ、私の目標の話はどうでもいい。今作の解説に戻りましょう。 KOUTAさんは吹奏楽部のお話ということで当初、音楽のスタイルをいわゆるビッグバンドスタイルで思い浮かべていたようでした。ちょうど私がアロー・ジャズオーケストラとのコラボを始め、ビッグバンドと自分の音楽が合致する可能性を模索していた時期でもあったので、KOUTAさんの考える物語を現実化するにはどうしたらよいかということを含め、それをもっと体感学習したいと考えました。その末に実現したのが昨年の「BREATH FROM THE SEASON 2018」というアルバムです。そして、そのビッグバンドを擁したライブツアーも行なったという訳です。私がライブのMCで常々申し上げております、すべての所作は一つの帰結点へと向かうベクトルとしての「線」を構成する「点」である、というのはこのような意味合いなのです。
そうして実際にビッグバンドのコントロールを経験して感じたのは、KOUTAさんが考えるような舞台構成で音楽表現をするとなるとかなりハードルが高いということでした。そこで、KOUTAさんに、ビッグバンドのスウィングジャズ的なサウンドよりも、管楽器の編成を少なくした、ブラス・ファンク・ロック的なイメージの方が考えやすいという提案をしました。悩める高校生たちが部活でブラス・ファンク・ロックを演っちゃうという。まぁ、部活にしては超絶に上手すぎる感じですが(笑)その発想が今作「東京少年少女」のサウンドイメージの原点になっています。
レコーディングでは名手本田雅人がリーダーとなり、日本のトップクラス管楽器奏者たちのアンサンブルによる強力なホーンセクションでそれを実現しています。CHICAGO, Tower of Power, BS&T, EW&Fなどポップス史に置いて重要な役割を果たした往年のサウンドをベーシックイメージにしました。何故なら本作は「架空のミュージカルサウンドトラック」という体でありながら、古き良き音楽を実体験してきた世代の角松ファンの皆さんにも自然に受け入れられるような心地よさを持った音楽にしたいと考えたからです。
そのようなサウンドをまとった本作ですが、製作の過程は自分としてはかなり特異で新鮮なものでした。それはKOUTAさんの考える「東京少年少女」のイメージを損なわず同時に角松作品にしてゆくということで、初めてコンセプチュアルな詞先行の作品創りをしました。 まずKOUTAさんに、彼のイメージの中にある「東京少年少女」の劇中歌のタイトルだけを書いてもらいました。それが、「to be or not to be」「まだ遅くないよね」「大人の定義」「恋ワズライ」「東京少年少女」の5曲です。次に各曲で伝えたいイメージを詩作していただき、それを自分が歌いやすいように、加筆、変更を加えてそこに曲をつけていきました。サウンドトラックなので、単純なAメロBメロサビという構成ではありません。言葉の温度の変化が随所にあります。これはKOUTAさんの頭の中で見えている場面の転換を表しているわけですから、当然曲調も各楽曲内で変化するわけです。これが、プログレッシブ的に感じる方もいらっしゃるかと思いますが、以前発表したプログレッシブ作品「THE MOMENT」と決定的に違うのが例えば演奏時間。長くて7分以内に収まっています。これは、本でいうなら「THE MOMENT」は哲学書で「東京少年少女」は物語である、というようなことです。そして、それを戯曲化するための作品なのです。 以上が大体の作品概要です。次に各曲の解説をいたしましょう。
1.「to be or not to be」
この「to be or not to be」というタイトルを聞いて、あ、シェークスピアですね と、即答される方は演劇に通じていらっしゃる方でしょう。シェークスピアの 「ハムレット」に登場する有名なセリフですね。さすがKOUTAさんは、舞台関係だけあってそちらへの造詣が深い。彼の頭の中の「東京少年少女」には「ハムレット」的なイメージもあるのかもしれない。私はそちらの方は餅屋ではないので、かじった程度だし、例えば時代は違いますが、ガーシュインを再勉強するのとは違い、シェークスピアはどちらかというと「退屈」に感じます。 しかし、何故か、ここ近年、シェークスピアを再演出した舞台をやたら見る機会がありました。「真夏の夜の夢」を脚色したものや、人気舞台劇団新感線の「メタル・マクベス」など。どれも、僕のような演劇門外漢をも退屈させないような娯楽作品に仕上げてありました。おかげで、シェークスピアに登場する人物像や物語は、高尚というより割と泥ついた人間臭さもあることを知りました。なので「to be or not to be」というタイトルをもらったと同時に、サビのメロディーが浮かびました。これはもうソウルで行くしかないと(笑)アイク&ティナ・ターナーみたいなフックがいいなと。ブラスはもういきなりTower of Power, BS&T、EW&Fみたいなパンチで導入したかった。 この見事なホーンセクションのレコーディング布陣は、 エリック宮城 Tp / 西村浩二 Tp / 中川英二郎 Tb / 本田雅人 Sax / 山本拓夫 B.Saxまぁ、よくこれだけのベストメンバーが1日しかないスケジュールの中、集まったもんです。ラッキーでした。ちなみに1日で全曲分のホーンセクションを録りました。Dr山本真央樹、Bass山内薫、Key 森俊之、ギターは私。ちなみに、今作ではほとんど私はギターを弾いていませんが、冒頭のこの曲だけは、バッキングギターを自分で弾きたかったので演ってます。 LR、それぞれゴールドとチェリーの両レスポール使用。
途中の場面転換では、いきなりハッピーな8ビートポップに変身する、そんな落差が自分でも楽しかった。曲は限りなくポップでも歌詞の内容は非常に重い、そんな曲を目指しました。コーラスには吉沢、小此木のツートップ。そこに若い男性のソウルフルなパンチの効いた声をミックスしたかったので、オーディションをしました。そこでインタースクールに通いミュージカルアクターを目指す現役高校生RYO君の声に出会いましてね。音程、リズム感、声の質など全てにおいて、良い資質を持っていて惚れこみました。今作でも本曲とタイトルチューン「東京少年少女」にも参加してもらっています。これからも色々なシーンで彼を呼びたかったのですが、残念ながら今夏より、渡米して向こうのミュージカルスクールでアメリカのシーンに挑戦するようです。今後の活躍を期待できる楽しみな人材との出会いでした。
本曲中 KOUTAさんの詩の中で曲にそわないと感じた部分を台詞に転換したところがあります。これもオーディションに合格した芸能関係を目指す現役女子高生、小学生の声を採用しました。ちなみにオープニングの「to be or not to be」タイトルつぶやきと影のある嗤い声は、昨年末の中野、神戸でコーラス参加してくれた昭和音大ミュージカル学科新卒の上森真琴の声。デモ段階でやってもらったのがあまりにも素晴らしかったので、本チャン採用と相成りました。真琴には曲作り段階のデモコーラスでもたくさん協力していただきました。感謝です。ちなみに真琴を紹介してくれたのは他でもないKOUTAさんでした。
2.「まだ遅くないよね」
KOUTAさんからこの詞の基本を見せられた時、瞬時にこれはデュエットでいきたいと思いました。物語の中では女の子同士の友情を表現するシーンなのですが、同時に長い付き合いの恋人同士、夫婦同士とかが、一度冷めてしまった情のようなものを何かのきっかけで再確認、再認識するようなシーンを想像しました。このようなダブル、トリプルミーニングを今作で多用するのは、「架空のミュージカルトラック」でありながら今作を聴く多くの方がそこにイメージを限定されず、多くの解釈、受け取り方ができる、そんなフレキシビリティーを持たせたかったからです。 トラックは全てプログラミングですが、時間をかけた綿密なトラックになっています。最近のディズニー海外ドラマシリーズの挿入歌のトラッククオリティーが素晴らしく、参考にしております。この時代、ただの打ち込みでも良し悪しがあるものです。勉強になります。何しろ、吉沢梨絵との20年以上ぶりのオリジナルデュエットですから、力が入ります。 彼女のメジャーデビューを手伝った時、まだ幼さの残る21歳でしたが、今や「押しも押されもしない」ファーストコールのベテランミュージカル女優。流れた時間を噛み締めながら丁寧に作曲しました。ただ、彼女のように上手い歌い手が相手ですと、ついつい自分がマニアックな世界に入ってしまいます。今作も、素人様が簡単に歌えるようなデュエットではありません(笑)場所場所でメインとハーモニーが次々入れ替わる複雑な作りになっています。耳の良い方は、是非、このデュエット挑戦してみてください(笑)私自身も苦労しながら歌いましたが、これも研鑽です。彼女のような素晴らしいシンガーが相手だからこそできる実験です。ライブが楽しみです。
3.「大人の定義」
この曲もKOUTAさんの詩を見たとき、あ、これイメージ、アコーステイックギターでしょ、と彼に聞くと、はいそうですと(笑)そこらへんのイメージのシンクロは彼とはほぼ間違い無いのですが、彼も段々欲が出てきまして(笑)あそこはこうしたい、ここはこうしたいと言い出すわけです(笑)この曲も、ここのこの部分で、キャラ変したいというようなことを話されていたので、大体、詩のこの部分だろうなと思い、お聴きのような構成にしましたが、出来上がったデモを彼に聞かせたら、いきなり歌唱力のいる感じですね、キャラ変もここまで激しくなく、もっと素朴でアコギをジャガジャガ弾きまくるくらいの感じのイメージなんだけど、とおっしゃるので、まぁ、いいじゃない、俺はこうしたかったし、このCDは角松作品だし本当のミュージカルトラックにするようなことがあった場合は、KOUTAさんの都合に合わせればいいよと。ひとまず歌詞と曲は、こうである、という提示としては問題ないよね、ということで納得してもらいました(笑)実際、彼が「東京少年少女」を、もし、実際に舞台化するなら、それに合った編曲をすればいいわけですから。基本的な「曲」として、これでいいということで合致しました。 その曲調変化の部分で私がやりたかったのは、変声期前の子供の声を使いたかったということ。ここでは、8歳から12歳くらいまでの子供たちが参加しています。ひとくちに若い声と言っても小学生、中学生、高校生、は全て似て非なるもので、特に変声期前はまさに一期一会、一生で一度きりの声。その声で子供たちの「心の叫び」を表現したかった。一瞬のシーンではありますが印象的な場面だと思います。ドラムンベース的なテンポチェンジは真央樹のドラムに、山内、森、鈴木の重厚な生演奏トラックを使用しました。その後に続くロックティストのゴスペル的なシーンは私と吉沢、小此木ツートップによるコーラス。全編に流れるアコーステイックギターは、鈴木くん。精密なバッキングは時間をかけて彼が納得するまでテイクを重ねました。
4.「恋ワズライ」
KOUTAさんからの詩が最後に送られてきた曲で、昨年末から始まった製作ですが、1月の頭にようやく送られてきまして、ギリギリ製作が完了しました。このような大変さも、コラボレーションの妙、というか面白さです。大変ですけど(笑)他の4曲が割とスムースに展開したのに対し、この曲は若干難航しました。KOUTAさんからの「明るい感じ」という漠然としたアイディアにどう応えるかということに逡巡した結果、ひらめいたのが「レゲエにしていい?」という答えでした。KOUTAさんは即答で「レゲエ、いいじゃないですか」ということだったので、早速取りかかりましたが、実は角松作品でここまでレゲエ的な作品は初めてでした。一番本格的なレゲエに近かったのは、アルバム「Fankacoustics」収録の「真夜中模様」くらいでしょう。そういう意味で真剣なトライでしたが本邦で、本格的なレゲエを表現出来るドラマーということになると難しい。レゲエは今や伝統的な世界遺産とも言えるジャンルの音楽になりつつある中で簡単な着手はできない。なんちゃってやっつけ的にやるのも趣味ではないので、根幹は思いきってプログラミングにして、その上で、名手、大儀見元のパーカッションが自在に揺れてもらうという形にしました。 さらに、ベースは山内くん、ギター鈴木くん、オルガンは森くんに演ってもらいました。さらに、森くんの一押し若手キーボード奏者、井上薫くんを抜擢しました。 フェンダーローズエレキピアノを弾いてもらっています。このようなヒューマンな実験的出会いが生むグルーヴは、レゲエのように自由なようで実はしきたりのあるジャンルのトラックでは有効なハプニングを生むと考えました。結果、非常に面白いトラックになりました。楽しかったですね。もどかしい男子の恋心が9月の空をバックに広がる光景を良き感じで表現できたと思います。
5.「東京少年少女」
本作のタイトルチューンにして、物語「東京少年少女」のテーマソングでもあります。重要な曲だけあって、一番展開も魅力的な作品になりました。オープニングから、マオリのハカを連想させる若者の男女混声のラップに始まりマイケル・ジャクソン、プリンスなどの80’sの王道の印象を感じていただけるようなプログラミングの造りを目指しました。アナログシンセが大活躍しております。生演奏とプログラミングが互いを引き立てあえるように配慮しました。基本はブラスの効いたEW&F的な模倣を随所に意図的に展開しています。さらに AORロッカバラードから、ゴスペル的な展開を経てテーマに回帰、エンディングは印象的なリフレインで終わるという、様々な王道のポップスのいいところをコラージュするようなある意味ディズニー的ミュージカルトラックメイクの方法を試みました。この1曲で、本作を聴く多くの方々に様々なイマジネーション喚起をしていただければと願っています。ツアーメンバー全員参加、オーディションで見つけた将来有望な小学生、高校生、大学生、にも参加していただき、本作参加の全ての人たちの力で構成された本曲はとても気に入っています。なお、ラップの作詞は、島根で英語教師をしながら古事記の日本語訳を海外に発信している親友、漢字検定を持つ超日本的アメリカ人、ダスティン・キッドさんです。
6.「It’s So Far Away」
本曲は物語「東京少年少女」とは関わりのない楽曲です。全編私の作詞作曲であります。先にも述べました、ミュージカル界のファーストコール、小此木まりさんとのデュエットナンバーです。小此木まりさん、と言えば、賢い角松ファンはもうお分かりですよね。そう、2014 年作品「THE MOMENT」にて、沖縄のシンガーチアキとデュエットカバーした、ディズニー映画「塔の上のラプンツェル」のメインテーマ「I See The Light」の日本語吹き替えバージョンを歌った、オリジナルシンガー、言うなれば「本物」です。海外作品の吹き替えバージョンで、オリジナルと同等の感動をした唯一の作品が、小此木さんと畠中洋さんの歌った「I See The Light」でした。「これ、俺も、歌いてぇ〜」と思い、思わず、カバーしてしまった(笑)という趣味趣味なエピソードはご存知の方も多いでしょう。思い入れが深すぎて、フルオーケストレーションでやってしまい、制作費がオーバーしてしまったという苦い思い出があるほど。今回、その小此木さんと共演できたご縁をくれたのは吉沢梨絵さん。昨年、吉沢さん出演の舞台を見に行った時に共演されている小此木さんを見て、「梨絵、梨絵、紹介して!」(笑)と、ご紹介いただいた。もちろん世代的にはかなりお若い方なので、私がカバーしていることすらご存知ではなかった。それがまた楽しかった。それから時は過ぎ、今回、梨絵がツアーとレコーディングでコーラスをやってくれることが決定した時、相方、どうする?と、梨絵と相談した時、「それこそ、小此木さんとかに声かけてみます?」というので「マジですか、そりゃ、やっていただけると嬉しいけれど・・」と。その場で梨絵がメールしてくれまして、するとすぐ返事が来ましてやりたいですという、ありがたいお返事が。 彼女も舞台と重なっているところもあり、数カ所は参加できないということでしたが、こんな機会、ご縁は滅多にないでしょうから、是非お願いしたいということで、実現しました。非常に近い生々しい舞台で彼女の声を聴いたので 上手いのは重々承知でしたが、ひとまずうちのスタジオで一回歌っていただこうと本作の何曲かのコーラスを試しに歌っていただきましたが、もう、笑っちゃうくらいお上手で、即、はい、本チャンに使わせていただきまーす、てな感じでした。そこからでした。押せ押せのスケジュールだったにもかかわらず、もう1曲書きたいと思ったわけです。小此木さんとデュエットしたかったんですねぇ〜。ああいう時の集中力は我ながら、馬鹿だなぁと思うくらいの馬力で、1日でメロデイーを書き上げました。 詞作に関してどうしようかと考えていたのですが、「東京少年少女」の基本にあるものが、権力が悪い、大人が悪い、というバイアスが強かったので逆に、大人が子供に対して感じる慈しみのような部分を強調した世界観にしました。同時にダブルミーニングとして、初恋の人を思い出す大人の心、とも取れる歌詞にしています。でもやはり、父が娘を、母が息子を、思う気持ちという風にとる方が多いかもしれません。信じられないような虐待が起こる今世、自分なりの思いを込めてみました。 小此木さんの歌は、予想をはるかに超えた表現力、歌唱力、声域で、制作終了後自分で何十回も聴き返したくなる出来でした。もう一つ、本曲で特筆すべきは、森、井上、による師弟コンビのピアノ。森くんに敢えてベーシックにフェンダーローズを弾いてもらい、その上で井上くんにアコースティックピアノを弾いていただきました。師匠の下地の上で、華麗に表現しろ!というミッションはなかなか緊張を強いられるものですが、さすが、最近の若者(笑)逆にその状況を楽しむくらいの探究心で演ってくれましたね。もちろんそれこそ求めるところでしたので非常に良かったです。まだ突き詰める課題はありますが、井上くんは今後必ず各方面で重宝される鍵盤奏者になっていくでしょう。
以上、長文新作「東京少年少女」作者による解説でありました。 本作が多くの方々に愛聴されますよう心より祈念いたします。 なお、初回限定版収録曲についての解説は、気分が乗ったらまた後日アップします(笑)何しろ時間がないのよ〜(笑)
追伸 僕が目指す「点の先にあるもの」についてのヒントは今夏のツアーパンフレットに書きますエッセイ「鬼塚玲二のこと」を、是非、お読みいただきたいと思います。